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  • 執筆者の写真Akira

VOMS - アスレティックトレーナー が知っておきたいスポーツ脳震盪の評価ツール

更新日:2020年12月17日



以前投稿したスポーツ脳震盪評価に関する記事、



では、SCAT 5を中心にオンフィールドとオフフィールドの評価について、私の経験も含めてお話しさせて頂きました。


再度強調したいのは、SCAT5はあくまでも評価ツールの一つであり、ドクターによる問診や検査、ImPACTと呼ばれるコンピューターテストなど、多岐に渡ります。これらを総合的に考慮した上で、スポーツ脳震盪の診断が初めて下されます。


その中で、ここ最近注目されるようになってきたのが、VOMSというスポーツ脳震盪の評価の一部として使われるツールです。今回はその評価ツールについて紹介していきます。


スポーツ脳震盪の評価ツール、VOMSとは

(Credit to Nursing Writing Services)


VOMSはVestibular Ocular-Motor Screening (Vestibular Oculomotor Screeningとも呼ばれます)の略称です。敢えて日本語に訳すとすると、


Vestibular - 前庭の

Ocular-Motor -眼球運動の


となり、「前庭及び眼球運動スクリーニング」とでも訳せるでしょうか(こういった類の専門用語は日本語に訳すとしっくりこないことが多いですね。)。以下、VOMSと表記します。


スポーツ脳震盪と一口に言っても、個々人によって伴う症状は様々です。ある論文ではスポーツ脳震盪のタイプをその症状に応じて6つに分類した上で、各症状に応じた評価や治療が現場における「予後予測」、つまりスポーツ脳震盪の回復を見積もるのに重要な役割を果たすとしています(Collins, Kontos, Reynolds, Murawski, & Fu, 2014)。


その論文が提唱する6つの分類は以下の通りです。

  • Cognitive/Fatigue Trajectory

  • Vestibular Trajectory

  • Ocular Motor Trajectory

  • Anxiety/Mood Trajectory

  • Post-traumatic Migraine Trajectory

  • Cervical Trajectory

(これらの分類に関する詳しい解説はまた別の記事で行います。)


VOMSは名前の通り、平衡感覚に関わる「前庭機能」と、目の動きに関わる「眼球運動機能」にフォーカスを当てた評価ツールになります。


VOMSを使って、スポーツ脳震盪に伴うこれらの機能の低下や障害を見分けることが出来れば、それらにより特化した治療やリハビリを行うことが出来、より効率的に選手の回復のサポートが可能となるということです。


前庭機能に関わる症状としては、「めまい」、「吐き気」、「かすみ目」、「動いているような感覚」、「ごちゃごちゃした場所での不快感」などがあります。


眼球運動機能に関わる症状としては、上記にも挙げられた「かすみ目」に加えて、「収束障害」(日本語でも聞いたことない難しい医学用語ですね。。。)、「文字を読むのが難しい」、「複視」、「頭痛」、「目でものを追うのが難しい」などがあります。


SCAT 5のリストを使って症状をチェックする際、上記の症状が多く見られる場合には前庭機能及び眼球運動機能の異常を疑い、VOMSを使ってさらに詳しい評価を行う、という手順も良いかもしれません。


ある研究では、スポーツ脳震盪に伴って約60%の競技選手が、前庭機能や眼球運動に関連した症状を発すると述べています(Mucha et al., 2014)。 その発生頻度故に、あらかじめBaselineのテストでSCAT 5とともにVOMSもやってしまう、と言うのもアリかもしれません。


ただし、SCAT5とVOMSを合わせると、選手一人15-20分ほどかかってしまうと思うので、大きなチームを管理する場合にはかなりの手間がかかり、時間対効果は低いかもしれません。ただし、スポーツ脳震盪が良く起こるアメフトなどのスポーツでは積極的に導入してもいいかなと思います。


個人的には、スポーツ脳震盪発生後にSCAT 5と合わせて実施する形をとりますが、今のところ顕著に悪いケースは見たことがありません(2019年の年始にスポーツ脳震盪のカンファレンスで詳しく勉強して最近導入し始めたので、数えられるほどの選手にしか実施したことはありませんが。)。


VOMS に含まれるスクリーニング項目

(Yorke et al., 2017)


VOMSは「Headache:頭痛」、「Dizziness:めまい」、「Nausea:吐き気」、そして「Fogginess:霧の中にいる感覚」の4つの症状を、0から10の数字で点数化するベースラインチェック (Baseline Symptoms)に始まります。


症状をチェックした後、7つスペシャルテストを行い異常の有無を確認していきます。因みにVORはVestibular Ocular Reflexの略です。各テストの詳細と点数の付け方は後編の記事で説明したいと思います。


VOMSの開発元であるUniversity of Pittsburgh Medical Centerが、VOMSの説明動画をYoutube(いつもお世話になっております。笑)に挙げています。


(Credit to Youtube, UPMC)


すでに話した通り、これらのテストは前庭機能と眼球運動の異常を見つけるためのテストです。ユース年代の選手を対象にした研究では、スポーツ脳震盪受傷後にVOMSを通して異常が見つかった場合、スポーツ脳震盪の競技復帰に向けたリカバリープロトコルの開始出来るまでの時間が遅れたと報告しています(Anzalone et al., 2017)。


まだまだ研究が必要ではありますが、VOMSを使ってスポーツ脳震盪発生後に、その回復の見通しを立てるためのツールとしても使うことが出来そうです。


最後に補足ですが、UPMCがプレゼンテーション動画をウェブ上に挙げているものを見つけました。こちらからリンクに飛ぶことが出来ます。是非参考にしてみてください。


Akira


Reference


Anzalone, A. J., Blueitt, D., Case, T., McGuffin, T., Pollard, K., Garrison, J. C., Jones, M. T., Pavur, R., Turner, S., & Oliver, J. M. (2017). A Positive Vestibular/Ocular Motor Screening (VOMS) Is Associated With Increased Recovery Time After Sports-Related Concussion in Youth and Adolescent Athletes. The American Journal of Sports Medicine, 45(2), 474–479. https://doi.org/10.1177/0363546516668624


Collins, M. W., Kontos, A. P., Reynolds, E., Murawski, C. D., & Fu, F. H. (2014). A comprehensive, targeted approach to the clinical care of athletes following sport-related concussion. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy: Official Journal of the ESSKA, 22(2), 235–246. https://doi.org/10.1007/s00167-013-2791-6

Mucha, A., Collins, M. W., Elbin, R. J., Furman, J. M., Troutman-Enseki, C., DeWolf, R. M., Marchetti, G., & Kontos, A. P. (2014). A Brief Vestibular/Ocular Motor Screening (VOMS) assessment to evaluate concussions: Preliminary findings. The American Journal of Sports Medicine, 42(10), 2479–2486. https://doi.org/10.1177/0363546514543775


Yorke, A. M., Smith, L., Babcock, M., & Alsalaheen, B. (2017). Validity and Reliability of the Vestibular/Ocular Motor Screening and Associations With Common Concussion Screening Tools. Sports Health, 9(2), 174–180. https://doi.org/10.1177/1941738116678411

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