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執筆者の写真Akira

スポーツ現場で働くアスレティックトレーナー とは。(後編)



「スポーツ現場で働くアスレティックトレーニングとは(前編)」では、アスレティックトレーナー の歴史や学校教育、資格等を中心に話をしました。後編ではアスレティックトレーナーの役割について紹介していきます。


アスレティックトレーナーの役割


(1) 予防 (Prevention)


アスレティックトレーナー の役割の一つとして挙げられている中で、おそらくもっとも見過ごされているのものと個人的に考えるのがケガの予防です。


予防にはストレングス&コンディショニング、ウォームアップ、クールダウン、リカバリー(アクティブ/パッシブ)、ひいては練習の量や強度 (Training Load Management)などまで含まれます。


予算があるしっかりとしたチームではストレングスコーチやスポーツサイエンティストが上記に挙げたほとんどをカバーするかもしれません。


しかしながら、専属のストレングスコーチやスポーツサイエンティストがいない場合はアスレティックトレーナー が上記のほとんどをカバーするケースもありあます。


私自身もこのような経験がありますが、日本で働くアスレティックトレーナー の方であれば尚更、このように複数の仕事を任されている人は多いと思います。


個人的には、もっと多くのアスレティックトレーナー が能動的にInjury preventionに取り組んでいくと、アスレティックトレーナーとしての価値がより高められると思っています。この辺りはまた別の記事にて、更に深く話したいと思います。


(2) 臨床評価と診断 (Clinical evaluation & diagnosis)


日本にいる大学の恩師がいつも「アスレティックトレーナー は"診断"はできないよ。医者じゃないんだから。」といつも言っていたのを思い出しますが、ケガを評価して、適切な処置を考えるものアスレティックトレーナー の仕事の一つです。


必要に応じてドクターに診てもらうことにより正確な診断を仰ぎます。例をあげると、アメリカの大学のAthletics(日本でいう部活、体育会)は近隣の病院と提携してドクターを雇ったり、ボランティアとして来てもらったりしています。


またアメフトなどの大きなケガのリスクがあるスポーツに関しては、必ずドクターや救急隊員が試合のサイドラインに控えています。アスレティックトレーナー はドクターとのコミュニケーションを行い怪我の評価を下し、その処置 (例えば、レントゲンのために病院に送る、病院には送らずトレーニングルームで応急処置を行うなど) を決定します。


(3) 救急処置 (Immediate care)は前回の記事で説明したので割愛します。


(4) 治療、リハビリ、リコンディショニング (Treatment, rehabilitation, and reconditioning)


アスレティックトレーナーの仕事を多く占めるのがこれらの仕事です。この辺りの仕事は普段スポーツの観客の目につくことはありません。


アスレティックトレーナー はケガをした直後/手術後直後の急性期のリハビリから、慢性のケガのトリートメントやリハビリ、更にはアスリートの競技復帰に向けたリコンディションング、そしてまで幅広く対応します。スタッフが揃った環境では理学療法士(PT)やストレングスコーチが、リハビリ・リコンディショニング時期に応じて、連携してプログラムを考案、実践します。


個人的にはリハビリは仕事の中でもお気に入りのパートです。ケガがないことに越したことはありませんが、アスレティックトレーナー の腕の見せ所でもあります。


(5) 組織と運営 (Organization and administration)


これと言った定義はないと思いますが、スポーツメディシンを運営するためのアスレティックトレーナー 同士でのコミュニケーション、ストレングスコーチや競技コーチとのコミュニケーション、ドクターとのコミュニケーションなどが該当します。


以前働いていた職場がメジャーリグサッカー参加の二軍チームだったのですが、その一軍チームにはDirector of performanceというスポーツメディシンとストレングス&コンディショニングを管理するボスが居ました。


彼の下にトップチームのアスレティックトレーナー やストレングスコーチ、そしてマイナーリーグ担当の私やユースチームのアスレティックトレーナー などが続く形になっていました。


私が担当していたマイナーのチームは、育成チームという位置付けで毎日トップチームとユースチームから選手が出入りしていたので、毎朝トップチームスタッフとのミーティングあり、ここでケガの報告や選手の入れ替わりの情報交換するのがその日の最初の仕事でした。


このようにアスレティックトレーナー は色々なポジションの人と関わりながらスポーツメディシンの運営を行います。


(6) 専門的職務 (Professional responsibilities)


良い例が浮かばなかったのですが、選手のケガや毎日のリハビリ内容を記録したり、健康保険のレポートを提出したり、ドクターのアポインメントをとったり、あらゆる雑務がここに該当するかと思います。


まとめ

前編・後編に分けてアスレティックトレーナー という職業について紹介しました。陽の当たらないところでの仕事ですが、一番アスリートに近いところで働ける職業で、特にケガをしたアスリートの人生にも大きく影響する可能性のある職業で、やりがいは大きいです。


繰り返しになりますが、アスレティックトレーナー は日本では国家資格ではありません。正しいか、正しくないかという議論は抜きにして、アメリカのアスレティックトレーナー 達と同様な形で仕事を出来ている方は、実際には日本に多くないのが現状です。


薄給故に仕事を何個も掛け持ちしたり、どちらかと言えばストレングスコーチのように、運動指導中心に活動をする方が多い印象です。


個人的にはこの現実に、アメリカの教育に基づいて形作られた日本のアスレティックトレーニング教育と、日本におけるスポーツ医療業界、ひいては健康産業界の現状やニーズとの大きなギャップがあるように感じます。


このことはアメリカで教育を受けたアスレティックトレーナー にも当てはまります。すでに成熟されたアメリカのスポーツ医療産業の需要に沿ってアスレティックトレーナー として育てられるので、"多くの場合"日本に帰ると違う形での活動を強いられてしまうのが現状です。


このブログを通してもっと沢山の方に本職業を認知して頂き、日本のスポーツ文化にあった形で、ブログを読んで頂いている皆様を巻き込みながら、アスレティックトレーナー として活動の幅が広げていきたいと思います。


Akira


Reference

  • William E. Prentice. (1963) Principles of Athletic Training (14th ed). Professional Development and responsibilities(pp.1-33). New York, NY: McGraw-Hill.

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