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  • 執筆者の写真Akira

スポーツ現場で活躍するアスレティックトレーナーとは?(前編)


当ウェブサイトを始めるにあたり、どのような記事から書き始めようかと考えたのですが、まずは私の仕事である「アスレティックトレーナー」が、一体どういった職業なのかということをご紹介しようと思います。


アスレティックトレーナー/アスレティックトレーニングに興味のある方、それを志す方のみならず、普段そういった存在を見たり聞いたりしたことのない方にも(一般的に言えばむしろそういった方が大多数だと思いますが)、私達について知って頂きたいと思います。


アメリカ生まれのアスレティックトレーナー

一般的に言われる"トレーナー"の起源は古代ローマやギリシャ時代まで遡るらしいのですが、今日に言われるアスレティックトレーナー は、19世紀後半のアメリカで大学やその他の学校間のスポーツ競技の発展に伴って生まれたものとのことです。


アメリカの外に目を向けると、カナダではアスレティックセラピスト (Athletic Therapist)、イギリスではフィジオテラピスト (Physiotherapist)などがあります。


1930年代、大学に勤務するアスレティックトレーナー 達によって設立された全米アスレティックトレーナー協会 (National Athletic Trainers Association) によると、アスレティックトレーニングは

"Athletic training encompasses the prevention, examination, diagnosis, treatment and rehabilitation of emergent, acute or chronic injuries and medical conditions. "

と説明されています。


簡潔に言うと、ケガや病気の予防、検査、診断、治療、リハビリに関することがアスレティックトレーニングという学問、ということです。これに付け加えるならば一般的には"スポーツ/運動に関する”ケガや病気でしょうか。


というのもアスレティックトレーナーはスポーツ選手(プロやアマチュア、学生を問わず)のケガや病気のケアをすることが多いからです。アメリカではこれが一つの学問とされ、それを専攻 (Major) として勉強することが出来ます。現時点で、"アスレティックトレーニング専攻"は日本には存在しません。


アメリカに置けるアスレティックトレーナーは準医療従事者 (Allied Hleath Care Professionals) の一つに含まれ、国家医療資格となっています。現在カルフォルニアを除く全ての州で、「アスレティックトレーナー」として活動するためには国家資格の取得と州が発行するstate licenseが義務付けられています。


因みにアメリカにおけるアスレティックトレーニングの最高学位は修士号でしたが、ここ数年でDoctor of Athletic Trainingと呼ばれる臨床向けの博士号が作られ、アスレティックトレーニングという学問を博士レベルまで学ぶ環境が出来始めています。


一方で日本では、先に言及した通りアスレティックトレーニングの学位はありませんし、アスレティックトレーナーになるための国家資格も存在しません。


その代わり、日本スポーツ協会(前・日本体育協会)による「公認アスレティックトレーナー」という認定資格が存在し、日本体育協会に認定された専門学校もしくは大学でのカリキュラムを修了すること(例外あり)によりその資格試験を受けることが出来ます。


学位に関して言えば、専門学校を出た場合大学レベルの学位はもちろんありませんし、大学を経て認定資格を取ったとしても、学位は学士号となりますし、その専門もアスレティックトレーニングではありません。この点はアメリカと日本のアスレティックトレーニングにおける教育の違いの現状です。


従って、必ずしもアメリカで勉強せずとも、日本にいながら資格をとって働くことが可能です。裏を返すと、国家資格ではないので自称"アスレティックトレーナー "として業務を行うことも可能になってしまうのが現状です。


本記事では資格の話がメインではないのでこれ以上の説明は割愛したいと思いますが、参考までに大先輩であるIzumi & Hosokawa (2019) の研究論文をReferenceとして載せておきます。


アスレティックトレーナーの業務

(筆者本人の仕事中を捉えて頂いた一枚。アスレティックトレーナーは試合中常に、サイドラインやベンチで選手のケガの発生に備えています。)


ここまでは、アスレティックトレーニングとは何か、を簡潔に説明させて頂きました。ここからはその一つ一つについてもう少し踏み込んで説明したいと思います。まずはイメージが膨らむように動画をご覧頂きたいと思います。


動画は英語になってしまいますが、日本人として、そしてアメリカで女性として初めてNFL (National Football League)でアスレティックトレーナーとして働いた磯アリコさんの仕事を姿を納めた、Oregon State University Athleticsの動画です (実は磯さんの後ろにいつもお世話になっている日本人の先輩のTKさんがいます。気づいた時は笑いました。笑)。


(Credit to Youtube OSUathletics)


動画にあるように、テーピングに始まり選手の水分補給を含む練習のカバー、選手のトリートメントやリハビリがアスレティックトレーナーの主な仕事です。


この他に、選手が大きなケガや病気をした時に医者に見てもらうために病院やクリニックなどと連絡を取ったり、ケガの発生やその日のリハビリの内容を電子システムを通して記録したりと、アスレティックトレーナーの仕事は多岐に渡ります。


アスレティックトレーナー の多くの業務はフィールドの外ものが圧倒的に多く、これらの仕事は普段人目につくことはありません。


次の動画は大学のアメリカンフットボールチームのアスレティックトレーナー の1日をGoPro(?)で撮影した動画です。この動画にはアスレティックトレーナー の1日が余すことなく映されています (いつかやってみたいです。笑) 。


(Credit to Youtube, Dalton Hathcock)


一方で、アスレティックトレーナー がよく人目の前に出るのは試合中です。大半のスポーツにおいて、アスレティックトレーナーは試合が行われるフィールドのサイドラインに待機してケガの発生に備え、必要であればフィールド内に駆けつけます。アメリカンフットボールにおけるアスレティックトレーナーが一番顕著な例ではないでしょうか。


(Credit to Youtube, Highlights Heaven)


上記の動画は、アメリカンフットボールにおけるフィールド場での応急処置の一コマです。スーツを着ている人はおそらくチームドクターと思われますが、その横にいる帽子を被った二人がアスレティックトレーナー です。


この動画では映っていないのですが、彼らはこのケガが起きて選手が立ち上がれないと判断された瞬間に、フィールドに走り込んで来て選手の状態をチェックしています。


映像にあるような姿が普段我々アスレティックトレーナー が人目につく場面です。しかしながら、先ほど言及した通り試合での応急処置以外の仕事が我々の仕事の大半を占めます。


一般的に言われるアスレティックトレーナー の役割は既述のものを含め、以下の通り6つに分類されます。


(1) 予防 (Prevention)

(2) 臨床評価と診断 (Clinical evaluation & diagnosis)

(3) 救急処置 (Immediate care)

(4) 治療、リハビリ、リコンディショニング (Treatment, rehabilitation, and reconditioning)

(5) 組織と運営 (Organization and administration)

(6) 専門的職務 (Professional responsibilities)



まとめ


「スポーツ現場で活躍するアスレティックトレーナーとは?(前編)」では、アスレティックトレーナー の変遷とその業務について"イントロ"として簡単に紹介させて頂きました。


アメリカですらその歴史は100年も経っていませんし、日本の歴史についてはその半分に及ぶか及ばない程の歴史しかなく、まだまだ発展中の専門分野であることは否定出来ません。


私の大学の大恩師である鹿倉二郎先生が、日本人で初めてアメリカでアスレティックトレーナー となられたのが1977年ですから、漸く40年近くの歴史を刻んだ段階です。私自身も日本におけるアスレティックトレーニングの発展に携わりたいですし、何らかの形で貢献する責務があると感じています。


今回の記事で、スポーツ医療の業界にいらっしゃる方だけでなく外の業界の方にも、私自身を含めてアスレティックトレーナー がどういった職業なのかを、少しでも知ってもらい興味を持ってもらえれば幸いです。


次回、後編の記事ではアスレティックトレーナー の主な役割六つについて、詳しく説明していきます。


Reference

  • “About.” NATA, 27 July 2017, www.nata.org/about.

  • Izumi, H. “E,” & Hosokawa, Y. (2019). Athletic Training Services in Japan: A Comparison of the United States and Japan Based on Educational Background. Athletic Training Education Journal, 14(4), 305–314. https://doi.org/10.4085/1404305

  • William E. Prentice. (1963) Principles of Athletic Training (14th ed). Professional Development and responsibilities(pp.1-33). New York, NY: McGraw-Hill.

  • 日本人ATCリスト - List of Japanese ATC-.” JATO ジャパン・アスレティック トレーナーズ機構, https://www.jato-trainer.org/jatoとは-about-jato-1/日本人atcリスト-list-of-japanese-atc/.


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